ゴミ屋敷になる原因のひとつに考えられているセルフネグレクト。
セルフネグレクトとは「自己放任」という意味で、精神疾患の一種です。
病気やショックな出来事などが原因で、自分自身の健康や安全を守ろうという気力を失ってしまい、栄養状態や住宅環境の悪化を招いてしまう状態のことをいいます。
もし身近な人がセルフネグレクトになってしまったら、どのように対処すればいいのでしょうか。
この記事では、孤独死に至る可能性もあるセルフネグレクトに関して詳しく説明します。
さらに、ゴミ屋敷になってしまった場合の解決方法も紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
セルフネグレクトの特徴
ニュース番組などでゴミ屋敷が取り上げられると、セルフネグレクトという言葉を耳にすると思います。
しかし、その詳細について理解している人は多くはないかもしれません。
以下で、詳しく説明します。
セルフネグレクトとは?
セルフネグレクトとは、「自己放任」のことです。
食事や着替え、病気の治療など、生活の中で本来行うべき行為をしなかったり、できなかったりするために、心身の安全や健康が脅かされる状態を指します。
セルフネグレクトは高齢者に多い社会問題と思われがちですが、若者から高齢者まで、幅広い世代の方が発症しています。
平成23年に内閣府が公表した(「セルフネグレクト状態にある高齢者に関する調査―幸福度の視点から 報告書」)によると、セルフネグレクトに陥っている高齢者は全国で9,381人~12,190人(平均値10,785人)にのぼると推計されています。
少子高齢化による高齢者数の増加により、近年ではさらに数が増えていると考えられます。
若者のセルフネグレクトに関するデータは、一般社団法人日本少額短期保険協会による「第6回 孤独死現状レポート」で報告されています。
2021年6月時点の報告では、20代までの孤独死者における自殺者の割合は26.5%にも達しており、孤独死者は年齢層が低いほど自殺者の割合が高くなっているのがわかります。
≪出展≫
内閣府 / 「セルフネグレクト状態にある高齢者に関する調査―幸福度の視点から 報告書」
一般般社団法人日本少額短期保険協会 孤独死対策委員会 / 「第6回 孤独死現状レポート」
セルフネグレクトの特徴
・家の前や室内にゴミが散乱した状態で暮らしている
・汚れている衣類を着用したり、失禁しても放置したりしている
・窓が割れていたり、屋根が損壊して雨漏りしたりする家に住み続けている
・生活に必要な最低限の公的制度、介護、福祉サービスの利用を拒否する
・治療が必要な病気やケガがあっても、受診・治療を拒否する
・使わない物やガラクタを集めてくる
・栄養状態が悪くなる
このように、自分自身に関心がなくなり、掃除や片付けをしなくなるため、ゴミ屋敷になります。
セルフネグレクトに陥ると、日常生活全般に無関心になってしまいます。
病気やケガをしても治療に関心がなく、食事もおろそかになるため、健康に悪影響を与えます。
セルフネグレクトは、自分自身の生活環境や健康状態を改善しようとしなくなるのが特徴です。
「生きる」こと自体に興味を失っている危険な状態のため、孤独死や自殺につながるケースも少なくありません。
セルフネグレクトになる原因
セルフネグレクトの原因は多岐にわたります。
生活環境の変化やストレス、身体的な制約、精神的な問題、社会的孤立などがその一因として考えられます。
この章では、セルフネグレクトが生じる背景や要因について説明していきます。
不慮の出来事や生活の変化
家族や友人の死、病気やリストラなどのショックな出来事によって生きる意欲を失い、セルフネグレクトに陥る人は少なくありません。
これらの変化には、驚きや戸惑い、不安などの感情が伴うこともありますが、それらを乗り越えるためには柔軟性と前向きな姿勢が必要です。
特に家事全般を配偶者に任せていた男性は、生活バランスを崩しがちです。
また、自尊心から誰かに頼ることをためらう人や、サポートを受けることへの遠慮や気遣いから、支援を求めるのは難しくなるという人もいます。
身体機能の低下
病気や事故の他、身体機能が低下した状態では、身の回りの世話や自己ケアがおろそかになります。
例えば、手の動きが鈍くなったり、立ち上がるのが難しくなったりすると、掃除や料理などの家事が困難になります。
高齢者の場合、老化が進むにつれて体力が衰えたり、視力が低下したりして、日常生活で誰かのサポートを必要とする場面が増えます。
歩行が困難になると外出が減り、必要な用事や医療機関への訪問が減少し、周囲との交流も少なくなります。
生活を維持したい気持ちはあっても、諦めや無力感を感じるようになり、セルフネグレクトを引き起こすリスクが高まるのです。
認知症・精神疾患・依存症など
認知症や統合失調症、妄想性障害、うつ病、アルコール依存症、強迫性概念、パーソナリティ障害などからセルフネグレクトに陥ることがあります。
例えば、認知症の進行により、日常の生活動作や時間の把握など、正しい判断ができなくなり、必要のない物を購入したり、ゴミの仕分けや処分ができなくなったりしてゴミ屋敷になってしまうこともあります。
精神疾患や依存症の場合、自身の健康や安全を脅かすような行動に走ることもあります。
また、被害妄想が激しくなり、人との接触や盗難を避けるために出入り口付近に物を積むような行為も見受けられます。
経済的な問題
経済的な苦境にある人は、自身が求める基本的な生活ニーズを満たすことが難しくなります。
例えば、食料を十分に確保できず、栄養不足や飢餓状態に陥る可能性があったり、適切な住居環境を維持できないことから、健康リスクが高まったりする場合もあります。
経済的な余裕がないために病院に行くこともままならず、健康状態がますます悪化するなど、負のスパイラルに陥ります。
同様に、経済的なプレッシャーによって不安が増して心理的な負担が高まり、物を捨てられなかったり、過度に節約したりすることで、セルフネグレクトが引き起こされることもあります。
社会的孤立
高齢者はしばしば家庭や社会からの関わりを自ら断ち、孤立した状態を選ぶことがあります。
一方で、若者は仕事の忙しさによってコミュニティから遠ざかり、結果として孤独になるケースも見受けられます。
仕事の忙しさにより友人との交流を断ち続け、孤立感や絶望感に包まれてしまうのです。
これらに加えて、生活環境の変化やコミュニケーション不足、不規則な生活や食事の乱れなどもセルフネグレクトが生じる要因となります。
セルフネグレクトのサイン
セルフネグレクトに陥る前には、いくつかのサインがあります。
もし家族や周りの人に次のような行動がみられたら、気をかけたり、病院の受診を検討してみてください。
また、認知力や判断力の低下は自分では気づきにくいので、セルフチェックの活用にもおすすめします。
【セルフネグレクトが疑われる行動】
・家の中や庭に物やゴミが散乱している
・身だしなみに気を配らない
・病気やケガを放置し、病院で受診をしない
・請求書の処理を怠り、支払いを滞らせている
・人との接触を避け、社会から孤立している
セルフネグレクトは深刻な問題です。
その人の安全や健康に危険をもたらす可能性がありますので、早めに適切なサポートや介入が必要です。
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セルフネグレクトを予防する方法は?
セルフネグレクトには、本人が自覚していなかったり、他人のサポートを拒否したりする人が多くいます。
本人が支援を望んでいない場合、本人からSOSの要請があるまで待つ判断をするのは容易ではありません。
生命や身体に重大な危険が生じ、死に至るケースも考えられるからです。
セルフネグレクトは誰にでも起こりうるものと理解しておくことが大切です。
自分自身や周りの人がセルフネグレクトにならないように、効果的な予防法を見ていきましょう。
変化に気づく
セルフネグレクトを防ぐには、家族や周りの人が変化に気づいて適切な対応をすることが不可欠です。
例えば、久しぶりに実家を訪れた際は、ゴミや不用品が室内に溢れていたり、外出や人との接触を極端に拒んでいたりしていないかなど、セルフネグレクトの兆候が現れていないか、注意を払うことが大切です。
セルフネグレクトは、その人自身が周りからの支援を拒否する傾向があります。
少しでも兆候が見られるようなら、ただちに対話をして問題の原因を理解しようと努めましょう。
適切な支援やサポートができれば、セルフネグレクトのリスクを軽減し、その人の安全と健康を守ることができます。
社会的な孤立を避ける
社会的な孤立は、身近な人々とのコミュニケーションを断ち切り、支援や助言を求めることができなくなるリスクを高めます。
家族や友人との交流が減少し、孤独を感じるようになったり、社会的なイベントや活動から遠ざかるようになったりする状況が続くと、セルフネグレクトに陥る可能性が高まります。
社会的な孤立を防ぐには、積極的にコミュニケーションをとることが不可欠です。
地域の見守りも非常に大きな力を発揮します。
自治体には様々な相談窓口があり、周りの人に相談しにくいことも聞いてもらえます。
役所や支援センターに相談したり、サポートを依頼したりすることも効果的な防止策です。
さらに、相談窓口や情報提供の窓口を把握しておくことも重要で、孤立感や問題が生じた際に迅速に適切な支援を受けることができます。
環境の変化に注意する
家族や身近な人の死、リストラや退職など、生活環境に変化が起きたときは要注意です。
生活環境に変化が起きても一緒に住んでいれば、身心に何か不調をきたした場合でも変化に気づきやすいかもしれません。
しかし、一人暮らしの場合は、気づいてくれる人が周りにいないというリスクがあります。
自ら誰かに相談したり、サポートを求めたりすることが苦手な人もいます。
虚無感を抱え続けたまま過ごすうちにセルフネグレクトに陥ってしまうケースも少なくありません。
環境に変化が起こった後は、しばらくの間、定期的に連絡をしたり、様子を見守ったりすることが大切です。
ゴミ屋敷になってしまったときの解決方法
セルフネグレクトに陥った場合は、ゴミ屋敷に住むことに疑問を感じていないので、自分から清掃や片付けをすることはほとんどありません。
もし、実家や親戚の家がゴミ屋敷になってしまった場合は、どうすればいいのでしょうか。
ゴミ屋敷清掃業者に依頼する
ゴミ屋敷化した家には弁当の空き容器やペットボトルから、生ゴミ、紙、プラチック、廃材など、様々なゴミが散乱しています。
また、生ゴミなどが腐敗し、床下や建材まで染み込んでいる場合もあります。
そうした状態の家には、害虫や害獣、菌が繁殖していることも多く、単にゴミを撤去しただけでは清潔になりません。
ゴミ屋敷の片付けには専門知識と経験が欠かせず、場合によっては、ゴミの撤去と一緒に専門的な清掃作業や殺菌、駆除処理など衛生面の対応を行う必要があります。
専門業者であれば、ゴミが大量に溢れている現場でも効率的に作業を進め、早ければ数時間、長くても数日で溜まったゴミを撤去することができます。
また、必要な作業に関して適切なアドバイスをしてくれるので、いろいろと相談に乗ってもらいましょう。
「自分たちで片付けられるだろう」は危険!
衣類や本、玩具類、スーパーのレジ袋などが散乱している状態であれな、自分たちで片付けることも不可能ではありません。
しかし、生ゴミや食べ残し、液体類に混じって、ざらざらした塵やホコリなどが床上に散乱している場合は、専門業者に任せましょう。
そのような状態では害虫や菌が繁殖している可能性が高く、物を動かすたびにゴキブリやクモが這いずりまわっていることも考えられます。
決して軽く考えず、「これくらいなら我慢すれば大丈夫だろう」というような判断は避けるべきです。
過去には、傷口からウイルスが体内に入り、脚を切断した事例も発生しています。
不衛生な状況は生命のリスクを脅かす危険な状態であるという意識を持ち、専門業者に一任しましょう。
≪参考≫
PRESIDENT ONLINE 『「左足をやむなく切断」想像を絶するほど過酷な”ゴミ屋敷清掃”という仕事』
心のサポートや予防策も改善には必要
セルフネグレクトは、単にゴミを片付けることだけでは解決されない問題です。
物理的な片付けは重要ですが、それだけでは不十分です。
セルフネグレクトの背後には、心理的な問題や精神的な負担が潜んでいることがあるため、心のケアも同じくらい重要になります。
心理カウンセリングや精神保健の専門家に相談し、適切なサポートを受けることが必要です。
また、ゴミ屋敷状態が繰り返されないようにするためには、予防策を考えることも重要です。
定期的なサポートを受ける体制を整えたり、家庭内でのルールやアクションプランを策定したりすることで、再発を防ぐことができます。
まとめ
セルフネグレクトは誰にでも起こりうる可能性があります。
孤独感や社会的な孤立が悪化し、家族や友人とのコミュニケーションが途絶えると、ゴミ屋敷や孤独死のリスクが高まります。
セルフネグレクトになると無気力な状態に陥り、健康や生命を脅かす危険にさらされていても、自ら助けを求めません。
そのため、定期的な連絡や面会を続けることが何よりも大切なのです。
家族や友人のサポート以外にも、地域の支援サービスや専門家の助言を活用しましょう。
必要なサポートを受けることで、セルフネグレクトのリスクを軽減し、健康な生活を送ることができます。
家がゴミ屋敷化してしまった場合には、専門業者に依頼して清掃を行うことも解決策の一つです。
いざという時にすぐに対応できるよう、専門機関や業者の連絡先を把握しておきましょう。
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