結論としては、ゴミ屋敷は一般的な建物と比べて「可燃物が多く燃え広がりやすい」「放火犯に狙われやすい」などの点から、火事が起きやすいと言えます。
また「ゴミが障害となり逃げ遅れる」「火の回りが速く近隣住宅へ燃え移る」という被害が拡大しやすい点にも留意しなくてはいけません。
最悪の事態を招かないために、ゴミ屋敷で火事が起きやすい理由を解説し、実際に起こった火災事例や火事を起こさないための対策をご紹介します。
ゴミ屋敷で火事が起こりやすい理由と被害が拡大しやすい原因を解説
ゴミ屋敷で火事が起きやすく、被害が拡大しやすいのには理由があります。
なぜなのかを知ることは、火事を防ぐための第一歩です。
ゴミ屋敷で火事が起きやすい理由
燃えやすい物が多い
ゴミ屋敷に多い衣類や紙類、ペットボトルなどは燃えやすい物の代表です。
トラッキング現象が起きやすい環境
トラッキング現象とは、差しっぱなしのコンセントと電気プラグの間にホコリが溜まり、さらに湿気を帯びることで火花放電が起き発火する現象のことです。
ゴミ屋敷の場合、ホコリや湿気も溜まりやすく一般の建物に比べてトラッキング現象が起きやすいのです。
タバコやストーブなどから引火しやすい
ゴミ屋敷では、火の元の近くにもゴミや物が密集しており引火しやすいです。
放火犯に狙われやすい
可燃物やゴミが屋外にまで溢れている建物は放火犯のターゲットにされる傾向があります。
消防庁によると”放火されやすい環境”として「家の周りや外階段の下などに紙類などの可燃物を放置」「ゴミ回収日以外でゴミを出している」「郵便受けに新聞やチラシが溜まっている」などを挙げています。
*参考サイト
防火対象物の放火火災予防対策の在り方検討報告書(平成11年3月)の概要(総務省消防庁)
ゴミ屋敷だと被害が拡大しやすいのはなぜ?
・出火に気付きにくく初期消火が遅れる
・可燃物が多いため燃え広がりやすい
・溜まったゴミが障害となり逃げ遅れる
・外部からの消火・救出活動が困難になる
「発火してもすぐに消せば大丈夫」などと、ゴミ屋敷での火事を甘くみてはいけません。
ゴミ屋敷で火事が発生すると「命・家・お金」を失うリスクがある
ゴミ屋敷が火事になると、家財や住居を失うなど物理的な損害はもちろん、最悪の場合、住人自身や他者の命が失われることもあります。
また近隣住宅まで延焼した際、出火原因によっては損害賠償を請求されることもあり金銭的な損害も発生します。
民法第709条
「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。」
(e-gov法令検索より引用)
と規定がありますが、火災による損害賠償責任は「失火責任法(失火法)」と呼ばれる法律が適用されます。
明治三十二年法律第四十号(失火ノ責任ニ関スル法律)
「民法第七百九条ノ規定ハ失火ノ場合ニハ之ヲ適用セス但シ失火者ニ重大ナル過失アリタルトキハ此ノ限ニ在ラス」
(e-gov法令検索より引用)
要するに、「火災の場合は賠償責任を負わなくて良い。ただし火事を起こした者に故意や重大な過失があれば損害を賠償する責任を負う」ということです。
*重過失と認められた事例*
・害虫駆除のため、アルコール製剤に点火し噴霧火炎を起こし周辺の段ボールに引火(広島高裁:令和3年4月23日判決)
・石油ストーブの火を消さずに給油し、こぼれた石油に引火(東京高裁:平成15年8月27日判決)
・寝たばこの危険性を認識しながら何ら対策せず火災を起こした(東京地裁:平成2年10月29日判決)
・ガスコンロにててんぷら油の入った鍋を、中火程度で加熱したまま台所を離れ油に引火(東京地裁:昭和57年3月29日判決)
・電気コンロを点火したまま就寝し、ベッドからずり落ちた毛布がコンロに垂れ下がり引火(札幌地裁:昭和53年8月22日判決)
など
ゴミ屋敷での火事は実際に起きている!事例3件をご紹介
2023年2月28日東京都東村山市
2階建てアパートの1階で火災が発生。
消防官が消火活動のため室内に入ろうにも大量のゴミが邪魔で入れず、ゴミを掻き出す作業に追われたそうです。
放火の疑いで逮捕されたのは出火元の部屋の住人だった中年男性で、「溜め込んでいたゴミを燃やそうと火をつけた」と供述。
アパートの退去期日となり、大量のゴミを処分することが目的だったようです。
*参考サイト
「【東京・自宅放火事件】容疑者が処理に困って火をつけた“ゴミ屋敷”から大量に出てきたモノ」週刊女性PRIME
2021年10月9日青森県平川市
高齢男性が一人暮らしをする近所で有名なゴミ屋敷で火災が発生。
この家では2週間前(9月26日)の深夜にも火災が発生したばかり。
この火災による影響で近隣住宅数戸が停電となる被害も出ました。
*参考サイト
「平川市岩舘「ごみ屋敷」火災 2週間に2度発生で住民困惑」弘前ライブニュース アップルストリーム
2016年10月11日福島県郡山市
かねてからゴミ屋敷として知られていた建物で火災が発生、建物は全焼し住人とみられる男性が死亡。
3月末には郡山市の行政代執行が行われゴミが強制撤去されていたが、その後もまたゴミが集められていたと伝えられています。
*参考サイト
「福島・郡山の「ごみ屋敷」全焼 住民男性死亡か」東スポWEB
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ゴミ屋敷での火事を防ぐためにできることは?4つの対策をご紹介
ゴミ屋敷で火事を起こさないためにできることから始めましょう。
コンセント周りをきれいにする
トラッキング現象を起こさないために、コンセントの周りに置かれたゴミや不用品を片付けてホコリをきれいに取り除きます。
掃除中の感電事故を防ぐため、ブレーカーを落としてからコンセントのホコリをはらい乾拭きしてください。
通電すると非常に危険なので、コンセント周りの掃除に水気はNGですが、しつこい汚れを落とすためにどうしても水拭きが必要なら、雑巾は固く絞って使用し、掃除後は完全に乾くまで待ってからブレーカーを入れましょう。
ストーブやコンロなどの火の元付近には物を置かない
火の元付近に物を置かない、またストーブやヒーターなど暖房器具のつけっぱなしはやめましょう。
タバコは可燃物の近くで吸わない、吸い終わったら確実に消火する、寝たばこをしないなどの他に、電子タバコに変えるのも有効です。
家回りにあるゴミを片付ける
屋外に溢れているゴミを片付けることは放火火災の予防対策になります。
ゴミ屋敷を片付ける
「コンセント周りをきれいにする」「ストーブやコンロなどの火の元付近には物を置かない」「家回りにあるゴミを片付ける」の3つは比較的すぐに対応できますが、あくまでも応急処置的な面が大きいです。
部分的な片付けや掃除を行っても、可燃物が大量に置かれたままではやはり火事対策としては不十分。
ゴミ屋敷で火事を起こさないために最も有効なのは、ゴミをすべて処分してゴミ屋敷から脱却することです。
そうすれば仮に出火しても、気付きやすいので火が小さい内に消し止められますし、もし燃え広がっても障害物が少ないため逃げ遅れる可能性も減ります。
ゴミ屋敷の解消方法は2つ、「自力」か「専門業者への依頼」
ゴミ屋敷を自力で片付ける
自力で片付ける最大のメリットは費用があまりかからないことです。
また、他人が家に入ることに抵抗がある人や自分のペースで片付けたい人にとっては良い方法といえます。
しかし、ゴミ屋敷を片付けるには、かなりの時間と労力を必要とするため途中で挫折してしまう人も少なくありません。
片付けを完遂できる可能性があるのは「片付け範囲が2部屋以下」「手伝ってくれる家族や友人がいる」といった場合です。
「広い間取りの住宅でゴミが大量にある」「住人が高齢者または体力面に不安がある」「手伝いを頼める人がいない」といった場合では自力で片付けるのは無理があります。
このような時は潔くゴミ屋敷片付け業者を頼りましょう。
ゴミ屋敷を自力で片付ける方法が知りたい方は下記コラムをご参照ください。
*関連コラム
ゴミ屋敷の片付けは何日かかる?「自分でor業者依頼」の目安は?
ゴミ屋敷を自分で片付けて掃除をする方法は?業者に依頼したほうがいい?
ゴミ屋敷片付け業者に依頼する
ゴミ屋敷片付け業者へ依頼すれば、自力では数カ月以上かかるような片付け作業もわずか数時間~数日で完遂してくれます。
費用はかかりますが、ゴミの分別や重たい不用品の搬出といった必要な作業はすべて任せられ、確実にゴミ屋敷から脱出できるのが最大の魅力です。
再びゴミ屋敷化しないように片付けのコツや整理整頓方法をアドバイスしてくれたり、ハウスクリーニング、害虫駆除、消臭・消毒などを追加依頼できたりする業者もあります。
不用品の査定・買取も行っている業者を選べば、費用負担の軽減につながることもあるのでおすすめです。
*関連コラム
ゴミ屋敷清掃業者の料金はどれくらい?選び方や依頼中のコツも紹介
まとめ
ゴミ屋敷での火事を防ぐためには「コンセント周りをきれいにする」「ストーブやコンロなどの火の元付近には物を置かない」「家回りにあるゴミを片付ける」といった、今すぐできる対策から始めて最終的にはゴミ屋敷自体を解消することが重要です。
そのままにしていれば、いずれ家やお金を失うばかりか最悪の場合では尊い命が失われてしまうことにもなりかねません。
自力での片付けに不安があるなら家族や友人に手伝ってもらう、ゴミ屋敷片付け業者へ相談するなど、まずは前向きに行動を起こしましょう。