自閉症スペクトラム、あるいはアスペルガー症候群という発達障害によりゴミを捨てられず、ゴミ屋敷が生まれてしまったケースがあります。
ただ単に片付けを面倒くさがっているわけではなく、脳機能の障害による弊害のため、周囲からのサポートがなければ片付けられない場合がほとんどです。
今回はアスペルガー症候群とゴミ屋敷の関係性や、アスペルガー症候群の方がゴミ屋敷を作ってしまう理由について解説します。
この記事の監修者
小西 清香氏
(整理収納アドバイザー)
元汚部屋出身の整理収納アドバイザー。テーブルの上には書類がいっぱい、畳んでいない洗濯物の山から洋服を探す日々。そんな私でも整理収納アドバイザーの資格を取った事がきっかけで、片付けられられるようになりました。以前の私と同じように片付けが苦手な方の力になりたいと思い、片付けの仕事をしています。
アスペルガー症候群とは?
アスペルガー症候群とは、自閉症スペクトラムと呼ばれる発達障害の一種です。
京都府立洛南病院のホームページによると、自閉症スペクトラムという発達障害のうち、知的発達に遅れがなく、流ちょうに周囲の人と会話できる人たちを指すと解説されています。
*参考資料
会話能力には何も問題がないため、自閉症と違って知的障害があると気付かれにくいのも特徴です。
アスペルガー症候群は生まれつきの脳の特性によるものです。
そのため完治はできませんが、薬物療法や生活療法により症状を和らげれば、生活の負担を軽減できます。
筆者の友人は大人になってから周囲とのコミュニケーションで違和感を覚え、精神科で受診したところアスペルガー症候群だと診断されました。
筆者の友人のように子供のころはアスペルガー症候群だと気づかず、大人になってから発達障害を持っていたと発覚するケースは少なくないようです。
アスペルガー症候群の特徴とは?
アスペルガー症候群の特徴として、主に以下の3つが挙げられます。
こだわりが強い
アスペルガー症候群の人はとても強いこだわりを持っています。生活に不必要な物でも本人が気に入れば溜め込んでしまい、いつの間にかゴミ屋敷を作ってしまう場合があります。
相手の話を聞かず、一方的に話す
アスペルガー症候群の人はコミュニケーションが苦手と言われています。
相手の気持ちに共感できず、場の空気を読めないまま発言してしまいます。
意図せず周囲の人が不快になる発言をしてしまい、周囲から避けられてしまう場合も珍しくありません。
孤立しやすく、困っているときに周囲の人へ助けを求められなくなったアスペルガー症候群の方もいらっしゃいます。
座っていられず、突然立ち上がって動きまわる
そわそわと落ち着きがなく、授業中や仕事中にうろうろと歩き回ってしまうことがあります。
気が散りやすく、今やるべきことに集中できない傾向もあります。
アスペルガー症候群とゴミ屋敷の関係性とは?
2018年1月に全国の市区を対象に行われた日本都市センターの調査によると、全国のゴミ屋敷の住人757名のうち、66人が発達障害を持っている方だと発表されました。
*参考資料
「自治体による「ごみ屋敷」対策 ー福祉と法務からのアプローチー」公益財団法人 日本都市センター
アスペルガー症候群の方は急な環境の変化や柔軟な対応が苦手なため、整理整頓が手につかずゴミ屋敷を作ってしまいます。
また、アスペルガー症候群の方は独自のこだわりによって集めた物を不要な物と認識できない傾向があります。
物が捨てられない
アスペルガー症候群の人は物を捨てるのが苦手だと言われています。物を処分して片付けると生活環境に変化が生まれるため、不安を感じてしまいます。
また、収集癖が強いのもゴミ屋敷を作ってしまう理由の一つです。趣味の道具や雑貨、古本など気に入った物を大量に集めるのもアスペルガー症候群の特徴の一つです。
複数の作業を同時にできない
ゴミを片付けようと思っても、部屋中に様々なゴミが散乱している状況を見て何から手をつければいいかわからず先延ばしにしてしまいます。
一つの作業に集中しなければ進められないため、部屋中に散乱したゴミを片付ける場合は小さな目標を少しずつ進めるなどの工夫が必要になります。
決まった習慣がある
アスペルガー症候群の方は日常生活をルーティン化させている傾向があります。
例えば昼食後に甘い物を一つ食べる、という習慣を続けていた場合、この習慣が急な予定によって変更になると軽いパニックを起こしてしまいます。
ゴミ捨てや掃除が日常生活のルーティンに含まれていなかった場合、自主的にゴミを片付ける機会はなかなか訪れません。
基準があいまいな作業に対応できない
皆様は誰かに「大体でいいよ」「ほんの少しだけ」と基準が具体的でない指示を受けて、困惑した経験はありませんでしょうか。
筆者も意図をうまく理解できないまま行動し、相手に怒られてしまった経験があります。
アスペルガー症候群の人は「大体で」や「少々」のような決められた基準がない表現が特に苦手です。
そのため、「部屋を適当に片付ける」「服を少しだけ捨てる」など、決められた基準がなければ作業が続けられず、片付けを止めてしまう場合があります。
上記の理由に加え、発達障害を周囲に理解してもらえない生きづらさにより、抑うつ状態やパニックなどの二次障害を起こし、さらに捨てられない状況へと陥る方もいらっしゃいます。
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「アスペルガー症候群かも」と思ったときはどうすればいい?
ご自身にアスペルガー症候群が疑われる場合は、精神科や心療内科などの専門機関に相談しましょう。
アスペルガー症候群だと診断された場合は、公的支援を受けられます。
各都道府県などが設置している「発達障害支援センター」では、発達障害の可能性がある人や家族など、周囲の人も含めて相談できます。
さらに必要に応じて医療や福祉、教育、保健、労働などの関係機関と連携して総合的に支援してもらえます。
アスペルガー症候群によるゴミ屋敷問題の解決法は?
アスペルガー症候群によるゴミ屋敷問題を解決するためには、医師や福祉の専門家のアドバイスを参考にしながら整理整頓のサポートをする必要があります。
必要か不要かの基準をはっきりさせる
アスペルガー症候群の人は物事を複雑に考えたり、想像するのが苦手です。
そのため必要としていない物でもなんとなく手元に置いていたり、集めている方がいらっしゃいます。
「1年以上使用していないものは捨てる」「壊れているものは捨てる」「似たようなものがある場合は捨てる」などの捨てる基準を設ければ、不要な物の判断がしやすくなります。
周囲の人に助けを求める
アスペルガー症候群の方にゴミを片付けてもらう場合は、まず「ゴミ」「捨てる」のワードは使わないようにしましょう。
本人の物に対する愛着を尊重しつつ、片付けの手順を小さな目標を立てながら説明します。
ゴミ屋敷を片付けるときは本人だけに任せるのではなく、家族や友人の協力を仰ぎましょう。
ごみの分別、処分ルールを決めてもらったり、作業を手伝ってもらえばよりスムーズにゴミ屋敷を片付けられます。
ゴミ屋敷片付け業者に依頼する
ゴミの分別や処分が苦手でうまく片付けられない場合は、ゴミ屋敷片付け業者に依頼するのも一つの方法です。
ゴミ屋敷片付け業者は様々な品目のゴミをまとめて回収してくれるため、事前に自力で分別をしておく必要がありません。
ゴミ屋敷片付け業者の利用は費用が掛かるため、何社かと相見積もりを行い、作業内容や料金を比較して決めるのがおすすめです。
まとめ
アスペルガー症候群を含め、ゴミ屋敷の住人が発達障害や精神疾患などを抱えているケースは多いと言われています。
急な環境の変化や柔軟な対応が苦手なため、整理整頓が手につかずゴミ屋敷を作ってしまうと言われています。
アスペルガー症候群によるゴミ屋敷問題を解決するためには、家族や友人など周囲の人間のサポートが必要不可欠になります。
必要に応じて、ゴミ屋敷片付け業者の利用も検討しましょう。