環境省が令和5年3月にまとめた「ごみ屋敷」に関する調査報告書によると、自治体がゴミ屋敷の事案を認知している件数は約5,200件にのぼります。
認知していない件数を含めるとゴミ屋敷はさらに多く存在していると考えられます。
現在、ゴミ屋敷の悩みを抱えている方にゴミ屋敷を放置してはいけない理由や、ゴミ屋敷の片付け方を紹介します。
自分の回りには自宅がゴミ屋敷化するような人はいないと誰もが思っているかもしれませんが、決して他人事ではありません。
当コラムをお読みいただければ、ご納得いただけるでしょう。
<参考>
環境省環境再生・資源循環局 廃棄物適正処理推進課
『令和4年度 「ごみ屋敷」に関する調査報告書』
この記事の監修者
小西 清香氏
(整理収納アドバイザー)
元汚部屋出身の整理収納アドバイザー。テーブルの上には書類がいっぱい、畳んでいない洗濯物の山から洋服を探す日々。そんな私でも整理収納アドバイザーの資格を取った事がきっかけで、片付けられられるようになりました。以前の私と同じように片付けが苦手な方の力になりたいと思い、片付けの仕事をしています。
なぜ放置してはいけないのか
火事やケガのリスク
一度火が出ると周囲の人々も巻き込んでしまう可能性があるため、ゴミ屋敷火災の危険性や対策方法を知っておく必要があります。
また、地震や浸水などの自然災害が発生した際に、大量の物やゴミが被害を大きくする要因にもなり得るため、特に注意しなければなりません。
健康状態や精神状態が悪化する
ゴミ屋敷には様々なゴミや不用品が混在しています。
例えばお弁当の容器や生活ゴミをそのまま放置していると、悪臭やカビ、害虫の発生原因となります。
衛生環境が悪いだけではなく、ゴミ屋敷の中で暮らしていると人を招き入れにくくなり、関わりを持とうとしなくなります。
鬱々とした気持ちになり、精神状態が悪化する可能性も否定できません。
近隣住民とトラブルになる
悪臭や景観の悪化からご近所トラブルに発展しやすくなります。
自治体へのゴミ屋敷の相談は地域住民が約9割を占めており、家族や親族によるゴミ屋敷はもはや身内だけの問題とはいえません。
溢れたゴミが隣家の敷地へなだれ込んだり、ゴミ屋敷が原因で近隣住民に生活被害が発生したりすれば、ゴミ屋敷の所有者に対して損害賠償請求をされる懸念があります。
そうした事態になれば、家族も無関係ではいられません。
また「交際相手や友人に家族や親戚がゴミ屋敷に住んでいると知られたくない」など、家族間・親族間でトラブルの要因となる例も見受けられます。
ここから先は、親の住む実家がゴミ屋敷になっている場合、子どもにふりかかるリスクです。
遺品整理で困る
実家がゴミ屋敷の場合、親の入院や施設入所で銀行通帳や印鑑、保険証など>が必要になったときに保管場所がわからなければ、親子で困ってしまいます。
家の権利書などの貴重品も同様です。
後々困らないように、大事な物は所在を明らかにしておかなければなりません。
また、もし実家がゴミ屋敷の状態で親が亡くなると、悲しみの最中に遺品整理とゴミ屋敷の片付けを行わなければならなくなり、遺族の精神的・肉体的負担が大きくなるでしょう。
相続でもめる
「ゴミごと実家を壊してしまえばいい」と思うかも知れませんが、家を解体する場合は、中にある残置物を先に処分すしなければなりません。
家屋の解体で出るゴミとゴミ屋敷内の生活ゴミは一緒に回収してもらえません。
また、他の財産と一緒にゴミ屋敷を相続放棄しても、残念ながらゴミ屋敷を管理する義務は残ってしまいます。
ゴミ屋敷は、いつか誰かが片付けなくてはいけません。
兄弟がいるならば、親が元気なうちに冷静に話し合っておく必要があるでしょう。
片付ける前に原因を究明する
ゴミ屋敷化するには原因があります。
まずはその原因を突き止めて、対策を考えることからスタートします。
もし原因を解明せずに片付けをしてしまうと、すぐに再発する可能性が高くなります。
原因を探り、その人に合った方法に沿って対処法を考えることがとても大切なので忘れないでおきましょう。
ゴミ屋敷化する原因で考えられるのは次の4つです。
片付けがもともと苦手だった
片付けが苦手な人はたくさんいらっしゃいます。
片付けが苦手な人とは、次のようなタイプの人です。
・物を捨てることに罪悪感があり、物を捨てられない
・ADHDなどの特性があり、整理整頓が苦手
家族と一緒に暮らしていると自分以外の人が掃除や片付けをしてくれるので部屋は清潔な状態を保てますが、一人暮らしや配偶者が亡くなって生活環境が変わったり、病気やケガで体の自由が利かなくなったり、いろんな要因が重なって結果定期にゴミ屋敷を作ってしまうこともあります。
性格や特性や原因なので、家族や身近な人が叱っても治りません。
暮らしやすいように不用品の仕分けから手伝い、物を減らすところから一緒にサポートすることが大切です。
健康や体力に問題がある
加齢とともに掃除やゴミ出しの負担は年々増えるものです。
体力の低下や腰痛や膝痛などで動くのが辛かったり、億劫になったりすると家の中の掃除や片付けをしなくなり、次第にゴミ屋敷化してしまいます。
高齢者、若年層と世代を問わず、病気やケガで日常生活に支障をきたすような場合は、家族の定期的な訪問や、家事代行サービスなどを利用してサポートする必要があるでしょう。
認知症やうつ病を発症している
久しぶりに実家に帰ると家の中の掃除ができておらず、ゴミがたまっていて親の急速な老いを実感する方も少なくありません。
ゴミの分別や整理ができなくなっていたり、同じ物をいくつも購入したりしている場合は、認知症が疑われます。
また、うつ病を発症している場合は、自分の健康状態や生活環境に関心を示さなくなります。
どちらのケースも本人が自力で解決するのは難しく、周囲のサポートが欠かせません。
まずは医療機関を訪れて受診したほうがいいでしょう。
セルフネグレクトやため込み症などの心理的な要因が関係している
ゴミ屋敷になる原因には、セルフネグレクトやためこみ症などの心理的な要因が原因になっている場合があります。
部屋の中を整理したり勝手に捨てたりすると過剰に怒ったり、他所からゴミを拾ってきたりするようなら心理的な要因が何かしら関係していると考えた方がいいかもしれません。
片付けを始める前に医療機関で受診するのを推奨します。
ゴミ屋敷住人に片付けることを納得してもらう
ゴミ屋敷の原因が判明しても、本人が納得ないままま始めると状況が悪化する懸念があります。
無理に片付けないことを前提に、説得する際のポイントを押させておきましょう。
叱責やNGワードを避ける
親や子どもがゴミ屋敷に住んでいるのを知るのは相当なショックを受けます。
怒りが湧いても強く責めてはいけません。
上から目線で叱責したり、親に介護施設に入居させるなどと脅し文句を言ったりすると、猜疑心や警戒心を強めてしまいます。
ゴミ屋敷のリスクを説明したうえで、心配をしていることや味方であることを伝えましょう。
生活が変わるタイミングに合わせて説得する
真正面から説得しても中々聞き入れてはもらえません。怒って話し合いを拒否されることも多いでしょう。
施設の入居を考え出したり、ヘルパーの訪問が決まったり、生活に何らかの変化が起きるタイミングを見計らって説得するのも良い方法です。
「掃除や片付けをしないとヘルパーさんがケガをするかもしれないので片付けようか」と声をかけてみましょう。
また、病気が悪化したりケガをしたりしたタイミングで「安全に暮らせるように片付けさせてほしい」と丁寧に伝えると、本人も気が弱くなっているので申し出が通りやすいかもしれません。
本人が普段使っていない部屋を片付ける
本人が普段使用している部屋の片付けを頑なに拒否しても、普段使っていない部屋の片付けなら納得してくれる場合もあります。
ゴミ屋敷住人が片付けを拒否する理由に、大切な物を処分されるのではないかという警戒心があると考えられます。
本人にとって大事な物がなさそうな部屋から片付けけを始めるのも良い方法です。
何も抵抗がなければ、本人のパーソナルスペースから離れたところから少しずつ片付けを始めましょう。
何度も通いながら片付けなければならなくなりますが、その都度コミュニケーションを重ねていけば、最終的に家全体の片付けを承知してくれるかもしれません。
どうしても納得してもらえない場合は自治体に相談する
片付けを強行できないといっても、下記のような場合は対応が急がれます。
・近所からすでにクレームが出ている
・認知症やうつ病を発症している
・健康状態、生活環境が悪化している
こうした状態であっても親族の説得に応じない場合は、自治体に相談しましょう。
ゴミ屋敷問題は身内だけで解決するのは難しく、各自治体が管轄エリアのゴミ屋敷を認識したきっかけの約14%が親族からの相談によるものです。
市町村によっては、市民からゴミ屋敷の相談を受けたときの対応策をまとめた、通称「ゴミ屋敷条例」を定めているところもあります。
ゴミ屋敷が発生している自治体にゴミ屋敷条例があれば、担当職員がルールに沿って対応をしてくれるはずです。
また、もしゴミ屋敷条例がない市町村でも、福祉の面から何らかのサポートを受けられる可能性があります。
家族以外の第三者には心を開いて、素直に話を聞いてくれるかもしれませんので困れば相談しましょう。
ご相談・お見積もり無料ゴミ屋敷片付けプログレスは
日本全国対応
※許認可の関係等で現在対応できない地域も一部ございます。
自力で片付ける?それともプロの業者に依頼する?
ゴミ屋敷を片付ける方法は大きくわけて2つです。
ゴミや屋敷と一言で言っても、お弁当の空きケースやペットボトルが床に散らかっている部屋から、家の外まで大量のゴミが溢れ出ている深刻な状況まで様々です。
ゴミ屋敷の程度の差によって自力で対応可能か、ゴミ屋敷の専門業者へ依頼するか判断してください。
自力で片付ける場合
自力で片付ける場合は、予定の組み立てが重要な鍵となります。
ゴミの仕分けから集めたゴミの捨て方まで、計画的に進めることが大切です。
ゴミ処理施設に自家用車で持ち込む場合も予約が必要な地域があるなど、地域ごとに処理方法は異なります。
片付けはなるべくゴミ屋敷に住んでいる本人と一緒に進めましょう。
本人の大切な物をうっかり捨ててしまうミスも防げますし、本人も片付けている実感が持てて再発の防止にもつながります。
実家の片付は生前整理にもなりますので、非常に良い機会です。
生鮮整理のコラムを紹介しますので、こちらもぜひ参考にして取り組んでください。
ゴミ屋敷片付けの専門業者に依頼する
次のような場合は、迷わず業者に依頼しましょう。
精神的にも身体的にも負担がかかりません。
・足の踏み場がないほどの大量のゴミが家の中を圧迫している
・悪臭が漂っており、ゴキブリなどの害虫が動き回っている
・水回りもひどく汚れていて使えない
・遠方に住んでいるため何度も現場を訪問できない
ゴミ屋敷片付け業者を選ぶポイント
費用の相場や妥当性を確認するために、地域の業者を2~3社選んで相見積もりを依頼しましょう。
1社のみの見積もりを依頼して即決してしまうと費用やサービス内容を比較できず、後々後悔するようなことが起きないとも限りません。
重要なのは、安いという理由だけで選ばないことです。
対応や作業の説明を丁寧にしてくれるか、契約内容や料金に不自然なところはないかなどもあわせて確認してください。
数社からいろんな意見を聞き、総合的に判断して安心して任せられる業者を選定しましょう。
ゴミ屋敷片付けを業者に依頼した場合の費用の目安
片付けの費用は、ゴミ屋敷の状況によってもちろん異なります。
ほとんどの業者が
・ゴミの量
・作業内容
・スタッフの人数
・オプションサービス
で費用を算出します。
下記に費用の相場を紹介します。
あくまでも目安としてお考えください。
【ゴミ屋敷 間取りの費用相場】
間取り | 費用 |
1K | 30,000円~ |
1LDK | 63,000円~ |
2LDK | 96,000円~ |
3LDK | 151,000円~ |
4LDK | 195,000円~ |
当コラムを運営する『ゴミ屋敷片付けプログレス』ではゴミ屋敷の作業事例を掲載しています。
作業にかかった正確な費用がわかりますので、ご自身のケースと照らし合わせて、ぜひ参考にしてみてください。
*ゴミ屋敷片付けプログレス ゴミ屋敷の作業事例
効果的な再発防止策とは
ゴミ屋敷を作ってしまう根本的な原因を取り除かない限り、せっかく片付けても半年程度で元の状態に戻ってしまうといわれています。
再発しないように下記の再発防止策を念頭に置いておきましょう。
頻繁に訪問して一緒に片付ける
なるべく訪問回数を増やして、定期的に一緒に掃除をしましょう。
ゴミ屋敷になった原因が体力面や健康面に問題があった場合は、誰かのサポートがなければきれいに整理された状態を維持するのは不可能です。
片付けやすいように家具や収納を考えることも重要です。
「脱いだ服はこのかごに入れる」「郵便物はこの箱に入れる」と指定しておくと、散らかしません。
また、家族と接触する機会が増えることで孤独感が減少し、生活が整いやすくなります。
家事代行サービスや見守りサービスを利用する
遠方に住んでいる場合は頻繁に訪問できませんよね。
そういう場合は、家事代行業者や訪問型の見守りサービスなどに利用を検討してみてください。
定期的に人が家を訪れるようになるので、ゴミ屋敷が再発しそうな兆候を事前に察知でき、大きな問題になる前に対応できます。
まとめ
ゴミ屋敷は早めの対処が重要です。
放置しておくと本人だけではなく家族にもリスクがふりかかる可能性があります。
本人にふりかかるリスク
・病気やケガをしやすくなる
・自然災害時に被害を大きくする可能性がある
・精神状態や死活環境が悪化する
・近隣住民とトラブルになる
家族にふりかかるリスク
・遺品整理に大きな負担がかかる
・相続する際にトラブルが発生する
そもそもなぜゴミ屋敷化するか、その原因として考えられるのが下記の4つです。
・片付けが苦手
・健康面の不安や体力の低下
・認知症やうつ病の発症
・セルフネグレクト
中高年で物を片付けられない人に多く見られるのが、マインドの問題です。
「定年後うつ」などが原因で、片付ける気力が低下するのに加え、不安から目をそらし、心のすき間を埋めるために次々と物を購入してしまうのです。
中には、人生の目標を見失ってセルフネグレクト(自己放任)状態に陥り、「ゴミ屋敷」にしてしまう方も少なくありません。
大切な家族を守るためにも、ゴミ屋敷問題は一緒に解決することが何よりも重要です。
ご家族だけで解決するのが難しいようなら、自治体やゴミ屋敷片付けの専門業者に相談しましょう。
当コラムがゴミ屋敷の解消に向けた一歩を後押しできれば幸いです。