貸していた部屋が汚部屋に!大家さんができる対策と後始末の方法
お役立ちコラム

賃貸経営を行う大家さんにとっては、汚部屋問題は深刻な事態です。
一軒家でのゴミ屋敷問題では自治体が独自に対策を条例化し、対応している地域も増えましたが、マンションやアパートなど所有する賃貸物件では現状、大家さんが対応しなくてはいけません。
このコラムでは、増える汚部屋問題の原因や背景、リスクに加え、大家さんができる対策後始末の方法について詳しくご紹介します。

この記事でわかること
  • 近隣との交流の減少、単身世帯の増加により汚部屋問題が増加
  • 汚部屋を放置していると様々な被害が拡大する
  • 汚部屋問題には入居者とのコミュニケーション、ゴミ出しの方法の見直しなどが効果的
  • 汚部屋の原状回復に必要な費用相場は1DKで約5~10万円

この記事の監修者

小西 清香氏(整理収納アドバイザー)

小西 清香氏
(整理収納アドバイザー)

元汚部屋出身の整理収納アドバイザー。テーブルの上には書類がいっぱい、畳んでいない洗濯物の山から洋服を探す日々。そんな私でも整理収納アドバイザーの資格を取った事がきっかけで、片付けられられるようになりました。以前の私と同じように片付けが苦手な方の力になりたいと思い、片付けの仕事をしています。

増えるマンション・アパートの汚部屋問題

増えるマンション・アパートの汚部屋問題

ゴミ屋敷としてすぐにイメージできるのは一軒家ではないでしょうか。

しかし実はマンションやアパートでもゴミ屋敷状態になる汚部屋問題が増えているのです。

見つかりにくく発見が遅れることから「隠れゴミ屋敷」とも呼ばれる汚部屋問題は、特に一人暮らしの20~30代の若い人を中心に増加しています。

この主な原因は次の4つが考えられます。

隣近所との交流の減少

一昔前とは違い「隣近所に誰が住んでいるのか知らない」という人は少なくありません。

交流がなければ隣の人がきちんとゴミ出ししているのかも把握できませんし、お互いにフォローし合うこともできません。

 

大家さんや管理会社の人も、設備の定期検査などの際にしか発見することができず、また注意喚起し、改善を要求することはできても、何度かの通告後も改善されない場合にしか強制的に退去してもらうことはできないので、結果的に汚部屋の状態がどんどん悪化してしまうことが多いようです。

 

単身世帯の増加

忙しいライフスタイルを送る若い世代はゴミ出しのタイミングが合わなかったり、ストレスや精神疾患などから物を溜め込んでしまったり、また高齢者は老化による体力や認知機能の低下など、ゴミが溜まる原因に加え、単身で生活する人が増えているため、手助けする家族や注意してくれる人が周りにおらず、汚部屋はさらに進行してしまいます。

 

ゴミの分別の細分化

環境保護の観点からもリサイクルすることが一般的になり、ゴミの分別も細分化しています。

マンションやアパートではそれぞれのゴミを出す曜日や時間が指定されていることが多く、他のゴミは出せません。

ゴミの日を間違えてしまった場合、数日~一週間は手元に置いておかなくてはならず、こうしたことが重なり、ゴミが溜まっていくようです。

 

24時間営業のコンビニ・スーパー、フードデリバリーの増加

夜勤や不規則な時間で働く人、忙しい人は24時間営業のコンビニやスーパーのお弁当、総菜などで食事を済ませてしまうことも多くなります。

またフードデリバリーを利用する人も増えました。これらの容器はプラスチックが使用されていてかさばります。

自治体によっては燃えるゴミと比べて回収頻度が低い場合も多いので、結果として部屋に放置して溜まってしまうのです。

 

汚部屋にはどんな問題があるのか

汚部屋にはどんな問題があるのか

汚部屋を放置してしまうと同じマンション・アパートの住人だけでなく、大家さんにも様々な被害が及びます。

悪臭・害虫・害獣

汚部屋にしてしまう人は生ものでもそのまま放置してしまう傾向があります。

腐敗してしまったものからは悪臭が発生し、ひどくなると隣近所まで拡散します。また害虫・害獣は思っている以上に早い段階から発生し、近隣へも被害が広がります。

 

火災

部屋に入り込んだネズミがコンセントをかじり、火災が発生するようなケースもあります。

物が散乱している部屋は一度火が着くと燃え広がるのが速く、被害が大きくなります。

死者が出た場合、次の入居者は見つかりにくくなりますし、死者が出なかったとしても、莫大な修繕費用がかかってしまいます。

 

入居者の減少

悪臭や害虫などの被害が広がり、改善されなければ、近隣の住人は住み続けることを嫌がり、退去してしまうこともあります。空き室にも新たな入居者が決まりにくくなり、大家さんにとっては大問題です。

 

改修費用がかさむ

火災が発生しなかった場合でも、汚部屋をまた人が住める状態にしようと思ったら、かなりの修繕費がかかります。ほとんどの場合で床や壁に付着したシミや悪臭を取り除くために特殊清掃やリフォーム、殺菌・消毒をしなければいけません。

 

汚部屋にされないために行う対策

汚部屋にされないために行う対策

大家さんにできる対策は「賃貸借契約時に特約として貸室を清潔に使用する旨を記載し、承諾してもらう」「普段から入居者や管理会社とコミュニケーションを取るようにする」「ゴミ出しの曜日確認を定期的に行う」になります。

中には、汚部屋対策として24時間ゴミ出し可能とする物件もあります。この場合は、ゴミをきちんと分別し、それぞれを決まった場所に出せばOKなので住人もゴミを溜め込まなくなるようです。

 

大家さんや管理会社はゴミ集積場をきれいに保つ必要があるので手間や人件費が増えてしまいますが、その分、共益費を平均より高くしているケースが多いようです。

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汚部屋が発覚した後にするべき対応

汚部屋が発覚した後にするべき対応

汚部屋が発覚した際、大家さんがとるべき対応は段階的に次の3つです。

入居者と話し合う

まずは入居者と対面や電話で話し、片付け・清掃をしてもらえるよう相談しましょう。

本人も片付けられずに悩んでいる場合には片付け業者を紹介するなど、サポートを行うと良いでしょう。

 

内容証明郵便を送る

忙しい人や知らない番号からの電話には出ない人もいるため、入居者との連絡が付かない場合に内容証明郵便を送りましょう。「いつまでに片付けを完了してほしい」「片付けてもらえない場合には賃貸借契約を解除する」という旨を記載します。

 

賃貸借契約の解除

内容証明郵便を送っても、期日までに片付けをしてもらえない場合は賃貸借契約を解除できます。

解除後にまだ入居者が部屋に居座るのは「不法占拠」に当たるので、警察に通報し、強制退去させることが可能です。

 

大家さんがしてはいけないのは「入居者の留守中にゴミを処分する」「個人を特定して、部屋の扉や共有スペースに張り紙などで注意喚起する」「水道や電気を止める」などです。
ゴミであったとしても入居者の所有物を勝手に処分することは「所有権侵害」に該当します。

訴えられると賠償金を支払うことになります。

個人を特定して注意喚起するのは名誉棄損とみなされ、訴えられる恐れがあります。

水道や電気を止める行為は賃貸借契約違反となりますので注意しましょう。

 

汚部屋の後始末で注意すべきこと

汚部屋の後始末で注意すべきこと

入居者がゴミを残したまま退去した場合、部屋を原状回復するのに多額の費用がかかります。

ゴミの量や部屋の広さにもよりますが、専門業者に依頼して1DKほどの部屋のゴミを撤去してもらったと仮定すると、およそ5~10万円かかるでしょう。

 

また、床や壁紙の張り替えが必要になった場合には、さらに20~30万円程度必要になります。

室内が凄惨な状態の場合は、追加で消臭や消毒などの費用が上乗せになります。

これらの費用は全額、元借主に請求できるのかというと、そうではありません。
国土交通省による「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」に則った対応を行いますが、これには「入居者が通常に使用することでの損耗や経年劣化による損耗は賃料に含まれているため貸主が負担する。

ただし、元借主が通常を超えるような損耗を起こした場合には、その分は元借主の負担となる」という内容が明記されています。

 

*参考サイト

「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」国土交通省

 

つまり、汚部屋といえど経年劣化分や通常使用での損耗分を差し引いた金額しか請求できません。

元借主にもそのことを説明し、可能な分を請求しましょう。

しかし、実際のところは元借主の資産状況から難しいこともあります。その場合には連帯保証人にも連絡し、事態を説明したうえで話し合いましょう。

まとめ

汚部屋問題は人が起こすものである以上、注意していても管理・把握するには限界があります。

しかし、賃貸経営をするうえで、汚部屋問題は重大なリスクです。普段から入居者や管理会社とコミュニケーションを取る他に、ゴミ出しの方法の見直しなどの対策を考えるのが良さそうです。

また起きてしまった後は、勝手にゴミを撤去するなど、違法なことをしないよう注意し、粛々と法的措置を進めましょう。

この記事の執筆者

執筆者

株式会社プログレス
編集部 S・A

遺品整理の経験から不用品を整理する重要性を実感。
片付けについて専門的なことを学び、困っている人の助けになりたいとプログレスへ入社。
「知識のない人にもわかりやすく伝える」を信条にプログレス各種サイトのコラムの執筆を担当する編集部きっての女傑ライター。

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